聴覚障害×音楽 vol.7

🎶AdoちゃんLIVEの情報保障🎶


音楽の世界では、歌い手の姿が見えることが当たり前のように思われがちですが、Adoさんのように「正体を明かさず表に出ない」アーティストもいます。

曲「うっせぇわ」が爆発的ヒットになったAdoさんの歌をミュージックMVを見てみようと思ったらアニメーションになっていた。どのPVもMVには本人が明かさない。“姿が見えないこと”に、どこか寂しさや距離を感じていました。

もし顔が見えれば、息づかいや感情の動きがもっと伝わるのに──そんなふうに思ったこともあります。

Adoさんが正体を明かさない理由は、もう多くの人が知っています。

音楽に集中してもらうため、プライバシー保護、神秘性を保つプランディング戦略などで先入観を避けて“声だけで勝負したい”という意志。これは今の時代らしい選択であり、聴者(きこえる人)にとっては「たしかにそうだよね」と理解しやすい理由だと思います。


でも、きこえない私にとっては少し違う現実があります。

きこえない人は“耳で聴く”のではなく、“目で聴く”。

表情、口の形、身体のリズム——視覚の情報こそが、音楽を理解する大切な手がかりです。

だから、Adoさんのように姿が全く見えないスタイルは、私たちにとって マスクで表情を隠された人と向き合うような感覚 に近いのです。

息づかいや感情が読み取れず、どうしても距離や壁を感じてしまう。

その一方で、Adoさんの「姿を見せない」という選択は、単なる“隠す”ではなく、余計な視覚情報をあえて消し、声だけで世界をつくりたいという強いこだわりでもあります。これは彼女にとっての“表現のマスク”。

自分を守りながら、作品に集中してほしいという選択なのだと思います。しかし、神秘性が大切であればあるほど、視覚化の壁は大きくなります。この葛藤は、想像以上にリアルです。

とはいえ、ここからが未来にとって大切なポイントです。

実は今、音楽を“目で楽しむ”ための技術が急速に発展しています。

 ♪歌詞をリアルタイムで映し出す字幕演出

 ♪映像やダンスで音を翻訳する“視覚化ステージ”

 ♪手話通訳者を世界観の一部としてデザインするライブ

 ♪配信画面に自然に重なる手話ウィンドウ

きこえない人も、きこえる人も、同じ温度で楽しめる工夫が増えています。Adoさんがこうした方向に進むかどうかは分かりません。

しかし、音楽の未来が確実に変わり始めているのは事実です。その中心には、「見えない壁をどう越えるか」という大きな問いがあります。

そして私は、手話パフォーマーとしてその橋渡しを続けています。

歌が見えないなら、見える形にする。

声が届かないなら、手話や身体表現で心に届ける。

その積み重ねが、きこえない子どもたちや、これから音楽を学ぶ若い世代に“新しい音楽の楽しみ方”を広げていくと信じています。

実際、高校や大学では「きこえない人の音楽の楽しみ方」を真剣に研究するゼミが増えています。これは、社会が音楽の多様性を本気で考え始めた証拠です。

音楽の楽しみ方は、耳だけではない。

姿が見えない歌い手でも、見せる方法は生み出せる。

壁は、越える工夫ができる。

この発表や投稿を通して、若い皆さんに「音楽の未来は、自分たちの手でつくっていける」

そう感じてもらえたら嬉しいです。

次回のテーマは「ドローンを使った音楽」


◀聴覚障害×音楽 vol.6   

手話うたユニット T-ripple

聴者とDeafのおかあさん。共生社会で生きる子育て応援キャラバンとして各イベント出動中。 ステージでの手話うたパフォーマンス以外にT-ripple(とりっぷる)と遊ぼう!手話うた、紙芝居、パペット、ワークショップ、ベビーサイン等々もやっております。

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