聴覚障害×音楽 vol.2
補聴器で音楽を聞き取れる?
補聴器には大きく分けて2種類あります。
ひとつは、音を大きくして高齢者の方が使う「集音器」。
もうひとつは、先天的または難聴のある人が使う「補聴器(高度・重度用)」です。
私は生まれつき聞こえないため、幼児のころからずっと補聴器を使っています。
つまり補聴器は、私の身体の一部です。
補聴器なしでは、話し声もテレビも、車や電車の音も、もちろん音楽も…
なにも聞こえません。無音の世界です。補聴器をつけて初めて“音”が入ってくるのです。
難聴には大きく分けて2種類あります。
◎伝音性難聴:外耳や中耳のトラブルで音が届きにくい状態。補聴器で改善しやすい。
◎感音性難聴:内耳(蝸牛)や聴神経の障害で、音は入っても言葉として聞き分けにくい。
私は「感音性難聴」です。
一般的な説明では、「音は入っても言葉として聞き分けにくい」とされていますが、私の場合、補聴器をつけていない状態では、まったくの無音に感じられます。
これは、感音性難聴の中でも重度〜高度の範囲にあたり、内耳(蝸牛)や聴神経の損傷が深く、音の振動が脳に届く前の段階で遮断されているためです。
補聴器をつけることで、外部の音は耳に届くようになります。しかし、感音性難聴では、音が届いてもそれを「言葉」として認識するのが難しく、音の存在を感じても意味のある情報として処理できないことがあります。
そのため、会話の内容を正しく聞き取るのが困難だったり、周囲の音の方向や種類を判断するのが難しい場面が多くあります。
普段の会話では、相手の口の動きを目で読み取り、大事なことはオウム返しで確認しながらやり取りしています。聞き取りが難しい場面でも、相手の表情やしぐさから気持ちや意図を読み取ることで、コミュニケーションを成立させることができます。音声だけに頼らず、視覚的な情報や場面の文脈を活かすことが、私にとって大切な理解の手段です。
では、音楽は聞き取れるのか?
答えは「聞こえるけれど、聞き取れないことが多い」です。
リズムと歌詞がうまく結びつかず、メロディに合わせて言葉を追えないことがあります。
テレビで音楽番組を観るときは字幕と口の動きで確認しますが、マイクが口元を隠してしまうと、どの部分を歌っているのか分からなくなってしまいます。音は聞こえるのに、歌詞を追えないのです。
最近ではYouTubeで音楽を楽しんでいます。そのときも「歌っている人の口の動きが見える動画」「歌詞を字幕表示」の2条件満たしている動画を選びます。編集によって見やすくしてくれるYouTuberさんのおかげで、音楽を味わいやすくなっています。
――補聴器をつけても、私にとって音楽を“聞き取る”ことは簡単ではありません。でも、音を“感じる”こと、リズムを“楽しむ”ことはできる。補聴器と一緒に生きてきたからこそ、音楽との関わり方も私なりに工夫しながら広がっているのです。
次回のテーマは、「音楽だけでない。他にも残される娯楽とは」
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