聴覚障害×音楽 vol.4
店内に流れるBGMは、どんな風にきこえる?
店内に流れるBGM。
聞こえる人にとっては心地よい雰囲気をつくる大事な要素かもしれません。実際にきこえる人に遠慮なくきいてみた。店内のBGMはどのようにきこえてる?
・ひとりでいるときは音楽そのものを楽しんでます。
・複数の人数といるときは会話を彩る背景音になったりする。好きな曲が流れると「これ好き!」と話題が生まれることもあります。
これをきいたとき、「背景音」って?ききなれない言葉。。。 詳しく調べると、
・聞こえる人は意識していないことが多い“空間の音”。
・店内の人の話し声、食器の音、扉の開閉音、換気扇や空調の音など。
・BGMのように「意識して楽しむ」ものではないが、空間の雰囲気に影響する。
あぁ、つまり”雰囲気だけの背景音”のように感じるってことね。
でも、私には少し違う世界です。
補聴器をしていても、スピーカーの近くだと「音だけは強く入る」のに、曲の内容は分かりません。メロディーや歌詞ではなく、ただの“音のかたまり”として入ってきます。
だから、何の曲かを知るにはアプリに頼ります。
私が使ってるアプリは「SoundHound」や「Googleの鼻歌検索」は、曲名や歌詞を表示してくれて本当に便利。特に「SoundHound」は、流れるBGMの歌詞をカラオケ風にスクロール表示してくれるのです。便利だけれども、そこにあるはずの「音色」や「雰囲気」はつかめません。きこえる人が感じる「懐かしさ」や「おしゃれ」といった感性を共有することは難しいのです。
さらに困るのは、複数で会話するとき。。。
私は、口の動きを読み取りながら会話しますが、補聴器はどうしても会話の声よりもBGMを強く拾ってしまいます。だから、友達の話が追いきれず、取り残される感覚になることもあります。友達が気づいて「話楽しめてる?会話分かるかなあって心配で遠慮なく言ってね。」と話しかけてくれました。その事を知っているきこえる友達が別の日にお店へ事前に連絡して「BGMスピーカーから離れた席を予約しておいたよ」とわざわざ言ってくれました。気遣いが本当に嬉しくて、胸が温かくなりました。でも同時に、「ここまで気を使わせてしまったのかな」と少し遠慮してしまう自分もいて、心の中で複雑な気持ちが交差します。正直に言うと、あえて言わずに自然に接してくれたら嬉しいな、と感じます。
また別の日にこんな事もありました。
会社の上司と飲みに行ったときのこと。私が先にお店に着き、案内されたテーブルが壁側で、しかも大きなテレビのスピーカーの近くでした。補聴器には音が強く入りすぎて、上司との会話が聞き取りにくくなることが分かっていたので、思い切ってお店の方に相談してみました。すると、いくつか並んでいる壁掛けスピーカーのうち、私の座るスペース側だけ音を消してくれたのです。その配慮に本当に救われました。おかげで上司が到着してからは安心して会話できました。ただその一方で、「聞こえる人にとっては物足りなく感じるのでは?」「会話が丸見えになるのは迷惑では?」と気になってしまう自分もいます。
店内のBGM。
―――それは心地よさを生むこともあれば、会話を妨げる壁にもなる。
―――聞こえる人には自然な存在でも、私には難しさを感じる存在。
けれど、これからの未来は違うかもしれません。
ー店内で流れている曲が、アプリやスクリーンに歌詞として“見える化”されたら?
ー音楽のリズムや雰囲気が、光や映像で表現されたら?
BGMは「聞こえる人のための空間演出」から、「誰もが一緒に楽しめる社会共生の音楽」へと変わっていけるはずです。
私はそう願っています。
音楽が、壁ではなく架け橋になる未来を信じて。
次回テーマは「可視化で楽しむスピーカーとは」
0コメント